寒さで目が覚める。
手はかじかみ、体は震え、息は白い。
幕を上げ、外に出る。外は薄く明るい。
日はまだ山の向こうに隠れている。朝の空気が頬を突き刺す。
かじかんだ手で細い枝を掴み、ナイフで薄く削る。それを焚き火台の中心に据え、周りを太い木で井形に囲む。
左手でファイアスターターを固定し、右手に持ったナイフで勢い良く擦る。
火花が散る。が、まだ火はつかない。
擦る。擦る。擦る。
体が熱を求めている。早る気持ちを抑え、もう一度。
ボウッ。細い木に火がついた。
この火を絶やしてはならない。生まれたての赤子のように、丁重に扱うのだ。
そうっと、そうっと、優しく息を吹きかける。
大きくなあれ、大きくなあれと、念じながら。焦ってはならない。
火は他の木に燃え移り、次第に大きくなる。もう放っておいても大丈夫。独り立ちだ。
私は安心して椅子に座り、静かな朝に目を閉じる。