学而不思則罔、思而不学則殆。

高校国語科教員が何か書きます。

紙と電子

 電子書籍が出てから早何年。一時期は紙の本がなくなるということも考えられた。だがしかし、僕は電子書籍よりも紙の本の方が好きだ。

 電子書籍は本棚を持たない。重さはタブレット端末の重さのみ。決して擦り切れることはない。一方で紙の本はかさばる。紙の本は重い。紙の本は劣化する。

 電子書籍の良さは紙の本の最大の短所である物質性を排除したことにある。しかし、最大の短所に見えるこの物質性こそが、紙の本の最大の長所だと僕は思う。

 紙の重さ、匂い、肌触り、めくる音、書き込むときの感触。それら全てが刺激となって、読書を豊かにする。部屋を圧迫する本たちは、自分の歩んできた道しるべとなる。擦り切れたカバー、書き込んで汚した余白、貼られた付箋はあのころの自分を保存している。本を買うことは自分を作る営みに他ならない。