くまのプーさんの言葉に「なにもしないことをする」というものがある。僕はこの言葉が大好きだ。
一般的に、「なにもしない」ことはあまりいいことだとは思われていない。「昨日なにした?」と聞かれたときに「なにもしなかった。」ではつまらない人間だと思われてしまう。それは「なにをしたか」がその人の属性の一部となる以上、仕方のないことである。手帳のカレンダーを埋めること自体が目的になっている人がいるように、常になにかをしていなければ自分の存在を確かめられない。それはラーメンズの「無用途人間」というネタに象徴的に表れている。(Youtubeにラーメンズの公演が載っているので気になった方は是非)
プーさんのこの言葉は一見するとただの言葉遊びのようにも思えるし、サボるための理屈をこねているだけのようにも思える。しかし、「なにもしない」ということも一つの「する」ことであると教えてくれるこの言葉は、我々に救いの手を差し伸べる。「なにもしない」<「なにかをする」から、「なにもしない」=「なにかをする」という価値転換を起こしてくれる。「なにもしない」ことも一つの「する」ことであり、それも自分を形作るための一つの営みだと思わせてくれる。
自分語りになるが、僕は昔、誘われたら断れない人間だった。なんとなく断るのが悪いような気がして、もっと言うと断るとそれ以降誘ってもらえないのではないかとビビってしまって、それほど行きたくもないのに断れなかったことがある。そんなときに都合よく予定が入っていればと思うことが何度かあった。要は断る理由が欲しかっただけである。そんなときにもこの言葉は役立ってくれる。