学而不思則罔、思而不学則殆。

高校国語科教員が何か書きます。

『子どもたちに民主主義を教えよう 対立から合意を導く力を育む』 工藤勇一・苫野一徳 著、あさま社、2022年10月6日

以下読書メモです。

 

『子どもたちに民主主義を教えよう 対立から合意を導く力を育む』

工藤勇一・苫野一徳 著、あさま社、2022年10月6日

 

1章

  • 学校改革の究極の目標

学校を民主主義を学ぶ場に変える

 

  • 目指すべき〈民主的な社会像〉
    • 誰一人置き去りにしない社会
    • 自分達でルールをつくろうという当事者意識を持つ
    • 対話を通して、利害関係を調整し、みんなにとって行きやすい社会をつくる

 

  • そのために、まず「みんながOKと言える最上位目標」を決める(子ども同士では難しい場合は大人が決めることがあってもいい)
  • その後は「対話を通した合意形成」を試行錯誤しながら学んでいく(31)

 

  • 多数決という仕組みは少数派を容赦なく切り捨てる可能性が高い

多数決という意思決定の仕方に頼り切っている限り、「誰一人置き去りにしない社会」はいつまでも実現しない

いわゆる「多数者の専制」に陥ってしまう(33)

 

  • 「みんなで政治をする」という民主主義の2つの欠点
  • 衆愚政治に陥りやすいこと」

大衆は往々にして、指導者に簡単に扇動されたり、感情的になったりして、理性的な判断ができなくなる時がある

  • 「多数者の専制」に陥りやすいこと」

デモス(大衆)のクラートス(支配)は、よほど意識していないと、少数者を圧殺してしまう危険性を持っている

現代の私たちが民主主義を考えるときは、「いかに衆愚政治を防ぐか」「いかに多数者の専制を防ぐか」までをセットで考える必要がある(36)

 

苛烈な経済競争が起こると、その過酷さに耐えられなくなった人たちは、問題を一挙に解決してくれる「強い男」を求める傾向にある(37)

 

  • 少数派を切り捨てる=「利害関係の対立をそのまま放置する」

「対立が起きたら相手を打ち負かせばいい。負けたら従うしかない」という発想を持った大人しか育たない(39)

 

  • 子どもたち同士の対話の際に欠かせないのが、大人の適切なフォロー

単に対話を続けさせたところでみんな好き勝手に意見を言うだけ

感情的な対立に発展したり、好き嫌いの話になって平行線をたどったりと、話が前に進まない

 

  • 対話のコツ

「みんながOKと言える最上目標」を必ず最初に決める

「誰一人置き去りにしない」ことを明確に含意している(40-41)

 

  • もし最上位目標を設定しない、もしくは最上位目標で合意していない状態で対話をさせているとしたら、無責任なことをしている(41)

 

  • 多数決を使っていい時の条件

「A案になってもB案になってもだれの利益も損ねることがないとき」

誰も置き去りにならないから

 

2章

  • 大人が何でもかんでも介入してばかりいると、いつの間にか子どもたちは「自分の問題は自分で解決するものだ」という当事者意識を失ってしまう(93)

 

  • 「みんな違ってみんないい」は対立を覚悟することであって、「心をひとつに」はそれとは真逆の考え方
  • 多様性を心の教育で解決できると信じている教育委は乱暴すぎる。共通の目的を探し出す、粘り強い対話の力こそ必要(94)
  • 子ども自身が「自分の考えを押し通すリスク」と「妥協点で合意するリスク」を天秤にかけて、理性的に考えられるかどうか。これができるのはトラブルが小さいときだけ(95)
  • 生徒支援をするときの優先事項
    • トラブルを子どもの自律の学びに変える
    • その支援をすることによって教員への信頼が増す
    • 一連の流れによって学校が保護者からの信頼を得る
    • トラブルを保護者の学びに変える
  • 3つの問いかけ
    • 「どうしたの?」(何か困ったことはあるの?)

  =子どもの置かれている状態を言語化してもらう。メタ認知に必要な内面に意識を向ける訓練になる。頭ごなしに叱らないことがポイント。

  • 「どうしたいの?」(これからどうしようと考えているの?)

  =意思を確認する。おかれた状態を解決するための方法を頭の中で考えるきっかけづくりになる。

  • 「何か手伝えることはある?」(私に何か支援できることはある?)

  =問題解決の手助け。どんな支援を受けるのか、手助けを受けないのかを判断するのは子ども自身。大人がサポートの意思を表示することで「味方である」と認識してもらい、心理的安全性に寄与する。

(127)

 

3章

  • スピーチ指導
  • 僕は何のためにプレゼンしているのか
  • 誰に対してプレゼンしているのか
  • 話した言葉が相手にはどう伝わっているか
  • そもそも民主主義社会は、「暴力」ではなく「言論」で決着をつけることを前提とした社会(168)
  • 私たちが磨くべきは、言葉巧みに相手を論破する力ではなく、言葉を駆使して共通了解を見出しあう力(169)
  • 「言葉は伝わらなくて当たり前」「思い通りに動いてくれなくて当たり前」「だから工夫しないといけない」(170)
  • 「後悔」の重要性

  『下町ロケット』のモデルになった植松努さんの講演の参加を希望制にした。講演が終わって行動から出てきた生徒の興奮した様子を見て、参加しなかった子たちは後悔していた。

 

やっぱり大事なのは考え方。